かつて、いや数年前まで、日本の展示会の多くは、華やかな衣装を身に纏った美女達が笑顔で
出迎え、多くの来場者は真っ先に、有名企業ブースのエンターテイメント化された華やかな
ステージに駆けつけ、登場感に胸躍らせながら次期新商品※への期待感を増幅させました。
そして、これらの「PRステージ」の開始時間に合わせて会場内を移動すると、様々なブースで
配られる企業ロゴが大きくプリントされたいくつもの特製紙袋は、手当たり次第手渡される
大量のカタログとノベルティ(景品)によって、直ぐに溢れてしまいました。
この様に日本で長らく続いた展示会の役割とは、出展企業からの、演出された情報伝達手段の
ひとつでした。この活気ある商品を彩る音と光の中には、末永く続く日本企業の繁栄を疑う人は
少なかった様に思います。
また、出展社は大きな予算を注いで、この登場感とイメージ訴求に主眼を置いたブースプロモー
ションを図る一方、出展するもう一つの大きな意味合いとして、自社ロゴを掲げた華やかなブース
へ、全国各地から社員を集め、共通ユニフォームを着用させて一体感を醸し出しながら
社内の活性化を図る、所謂、「士気を高める為の場」としても活用されてきました。
これらは、海外で生まれた展示会の本来の役割である、「トレードショウ」という意味合い
より、どこか「お祭り」的要素が強かったのではないでしょうか。
しかしインターネットの普及により、様々な分野での情報収集の主役がネット収集に代わった今、
産業展示会の果たす役割は大きくシフトしました。
そのシフトした展示会場では、激動期を勝ち抜くための優れた“武器”を真剣に選別する来場者と、
自社の存続を賭け、固定マーケットを打破する新しい事業内容のメリットを必死で説く
出展企業とが、激しく交差しています。
また、多くの会社トップである社長自らがプレゼンテーターとしてブースへ訪れる様になった今、
この機会を利用し、会場近隣ホテルのバンケットルームなどでは、密かに重要なトップ間交渉が
行われるなど、最早産業展示会はさながら、来場者側、出展社側双方にとっての「生き残りを
賭けた主戦場」の一つと成っています。
そして、ネット上で日夜種々雑多な情報が飛び交う中、マーケットの主要な会社が一堂に会する
この機会は、最も効率の良い取材対象として、今までに無かった程、様々な多くの報道メディアを
動員するに至り、情報発信拠点としての役割はより一層大きくなりました。
※ このサイト上の「商品」とは、製品、技術、サービスなどの総称といたします
ネット検索により、必要となる商品を世界中から探し出し、その詳細なスペックはもとより
ユーザー評価から競合ランキングに至るまで、様々な情報を何時でも何処でも入手できる様に
なった今、わざわざ展示会場へ足を運ばないと解らない、といった商品が少なくなったのは
事実です。
しかし、インターネットの大きな弱点として、情報の信憑性、評価基準の公平性や精度を
問われる点があります。個人が趣味として使用するものならそれでも許されるかもしれませんが、
企業が将来を託す“武器”となる商品を決定する際にはそうはいきません。
また、商品スペック同様、時にはそれ以上の重要な選択要素となる、それを供給する会社の
企業姿勢、社会的信用度、アフターフォローの確かさ、等々、会社自体の信頼性を、様々な角度
から検証しなければなりません。
それらの点に於いて、競合商品を含む、全てを効率良く比較検討できる展示会の役割は、
更に重要となっています。
今までは新しい情報を収集することがメインであった、どちらかというと受動的であった
展示会への来場目的は、ネットの普及により大きく変わり、情報収集して検討された後の
段階にあたる、最も重要な導入段階、端的にいってしまうと「決定するために来場する」
といった、より積極性ある来場目的の割合が高くなりました。
一般的な商業展示会の出展社数は、少なくても300社近く、多い複合展では1,000社以上
ありますが、1人の来場者が1日に訪問できるブース数=出展社数とはいったいどの位でしょう?
会社から展示会場へ着くまでに1時間掛かる一般的な来場者が、8時間のデイタイム全てを
展示会に費やすとした場合の例を挙げてみます。
先ずは展示会を訪れる際に必要と成る移動時間などが、
1. 会社から会場間の往復移動時間:2時間
+
2. レジストレーション(入場受付)時間&会場内移動時間合計:1時間
+
3. 昼食を含む休憩時間:1時間 = 合計4時間
とした場合、それらの合計4時間は必要付帯時間と成ってしまうので、合計持ち時間の
8時間からそれらを引いてしまうと、間違って入ってしまったブース訪問時間も入れて、
約半分となる4時間だけが、実際のプレゼンテーションを受けられる時間と成ります。
それではその4時間から訪問ブース件数を割り出してみましょう。
1ブースに費やす滞留時間の平均を、間違って訪問してしまい直ぐに退場したケースも含むので、
少なく見積もって5分間とした場合でも、1日のデイタイム時間全てを費やして訪れられる社数は
延べにすると僅か48社しかないのです!
展示会総出展社数を300社とするとその16%の出展社、展示会総出展社数を1000社とした場合は
全体の5%も満たない数の出展社しか訪問出来ないのです!
この様に、両者にとってブース内でのひとつひとつのプレゼンテーションがいかに貴重で
重要なのかが解ります。
メインターゲットとなる来場者をブースに集客するために、先ず必要となる大切なポイントが、
出展商品を極力少なくするということです。多品目の多岐に亘る扱い商品がある出展社の場合、
ラインナップとして、プライオリティ商品以外の多くの品目を混在して展示してしまう
傾向が往々にしてあります。
しかしこれは、プライオリティ商品の存在感を薄めてしまい、無駄な目的違いの「お見合い」数を
増やすことに繋がってしまい、貴重なターゲット来場者を逃してしまう結果に成り兼ねません。
その商品展示スペースには、プライオリティ商品のより多くの導入事例や、
ソリューション事例などを加えることが重要となり、限られた時間内に於いて
ターゲット来場者を呼び寄せる確率をぐっと引き上げ、成功率を高める方法となります。
ブース間の共通通路、特に通路幅が広いメイン通路を行き交う来場者から目に留まり易い
ブースのファザード(通路に面した外装)には、今までは会社のロゴをより目立つ方法で
表記することが重要視されてきましたが、その部分こそ、来場者と出展社とのミスマッチな
「お見合い」数を減らす為のサイン表記が必要です。
そのサイン表記方法は、商品特徴が直ぐに連想できる短いキャッチフレーズ的説明文を
アイキャッチとする方法が、最も解り易いサイン表記となります。
実際のサイン例としては、「○○以下の精度を実現した高精度○○機」、「○○%の作業効率を
上げる○○システム」など、簡潔で分かり易いフレーズと、商品カテゴリー、そして具体的な
数値を組み合わせたフレーズサインが効果を発揮します。
その特徴がデザイン面など、フレーズ(文章)として表記出来ない場合などは、そのデザインの
特徴部分を大きく拡大した写真を装飾的なアイキャッチとしてファザード全面に掲示したり、
大胆に抽象化させたグラフィックをアイキャッチにする方法など、様々な方法が考えられます。
また、展示商品が既に前面でアイキャッチとなっている場合などは、企業姿勢を示す、
コーポレットスローガンをサブキャッチとして併記する方法なども効果的です。
既にシフトした現在の展示会では、ターゲット来場者を自然と呼び寄せることが重要であり、
今まで洗練性に欠けるとして敬遠されてきた手法でも、時代の要請に沿って取り入れることが
必要です。
前記2点をクリアさせたブースは、もう声を枯らして呼び込む必要はありません。
呼び込みをしなくても立ち寄る来場者が必然的にターゲットに近い来場者だからです。
呼び込みに体力を消耗させ、一番重要な商品説明、プレゼンテーションが疎かになって
しまったら本末転倒です。また、インセンティブ(粗品)を配布して集客を図る方法なども、
たとえ名刺が多く集まっても、ターゲットでは無い来場者の名刺率を高めてしまうだけなので
必要ありません。
今まで、会期終了後に対象外来場者の大量の名刺を基にしてしまい、どれだけ多くの時間を
使って、無駄なアプローチ営業をしてきたことでしょう…
インセンティブを効果的に活用する方法は、見込み客にプレゼントすることです。
例えば、前もって招待状を送っていた見込客が来訪してくれた際には、ちょっとしたプレゼント
でも、感謝の気持ちを込めて差し上げることで、気持ちを和らげて、警戒心を解くことに
一役買うかもしれません。
ブースの担当者に任命されると、開催期間中にどれだけの名刺が集まったかで、役割を
果たした気持ちになりますが、今や “お祭り”を盛り上げるための盛況感は必要ありません。
結果が問われる時代です。
開催直前に良く聞かれるのが、「説明員はどこで待っているのが良いか?」という点ですが、
これは先ず、大切な来場者の入場導線を遮らない様な適切なブース内説明員の人数を決めて、
それ以上の説明員はブース内では待機しないことが必要です。
そして、ブース内説明員は、入場導線から十分なスペースを取りながら、お客さまへ直接
向き合うのでは無く、斜め45度位で立ちながら、そして最も大切なことですが、常に
「笑顔で待つ」ということです。
それ以外の説明員はどこに居るのが適切かというと、ちょっと裏技になってしまいますが、
担当コーナー全体が見えて近隣ブースの邪魔にならない、ブースから少し離れた位置で待ちながら
ブース内説明員が手一杯な際にだけ、説明員を欲している来場者へこちらから近づきながら、
笑顔でアプローチすることにより、好感を抱かせる接客方法が図れます。
後になって立ち寄ろうと思っている来場者でも、ブースを一度離れてしまうと、時間が足りなく、
なかなか戻れないのが現状です。
服装に関しては、外資系ブースで会社と商品ロゴが刺繍された特注ユニフォームが採用され
はじめると、日本企業ブースでも一気にこれが流行り、“統一ユニフォーム=最先端技術ブース”
と思われていた時代も長らくありましたが、今の来場者にとっては何の意味もありません。
それより、ネクタイを締めない社員が多くなった今こそ、誰に対してでも決して悪い印象を
与えない、ビジネススーツにネクタイというビジネスに於けるフォーマル着に、
大切なポイントとして、ブースに居る全社員が、会社名と部署名、そしてフルネームが
きっちりと入った統一フォームのネームプレートを胸元に付けるということです。
この様なちょっとした工夫により、ユーザーオリエンテッドで誠実な企業姿勢を与える
好印象な服装になります。
スティーブ・ジョブスの「驚異のプレゼン」を筆頭に、大企業のトップである社長自らが
直接訴えかけるプレゼンテーションは、たとえぎこちなくても強い説得力があります。
大小を問わず、ステージやワークショップ会場など、多くの来場者を集めたプレゼンテーションに
於いては、今やトークスキルが高い広報担当者や代読するプロのナレーターより、
社長や開発担当者など、商品を誕生させるプロセスに於いてより強い影響力があった
責任者によるものが求められています。
いくら華やかでも、優れたスペックだけを詰め込んだデフォルト説明より、商品化されるまでの
様々なエピソードを盛り込んだ人間臭い体験談の方が、どんな商品に於いても興味をそそり、
印象深く残るものです。そしてこれが、正に息遣いまでをも感じ取れるライブ感であり、
展示会へ来場するメリットのひとつと成っています。
しかし往々にして、普段大勢のユーザーの前で説明する機会が無い、開発担当者や責任者
にとっては、大きな重荷と成ってしまい、普段は説得ある「げき!」を飛ばしている人でも、
原稿を棒読みしたような説明になってしまったり、専門用語を頻繁に取り入れてしまうことで、
高度知識を有する一部の人だけが解るプレゼンテーションになってしまうケースが多々あります。
しかし大丈夫!これを一気に解決し、尚且つ事前の手間も大幅に省くことが出来る方法が
あるのです。
それは、どんな状況にも臨機応変に対応し、失敗をも逆手にとって面白いトークセッションに
変えてしまうことが出来る、アドリブが得意なプロのナレーターを出演者として起用することです。
そして、ナレーターが来場者に“成りすまし”ながら、様々なレベルの訊きたいこと、聞かせたい
内容の質問を、開発担当者や責任者へ投げかけながら進行させていく方法です。
事前に整ったナレーション原稿を用意する必要も無く、時には、商品に関係ない個人的な趣味の
質問などを交えたりすることで、責任者のキャラを惹きたて、緊張感を解しながら会話が弾む、
楽しい、そして、とても印象深いプレゼンテーションも実現いたします。
ステージ回数が多い場合は、質問内容を多めに用意して、その度ごとに質問内容を少し変える
だけで、ライブ感を醸し出します。また、特に強調したい内容だけが長く成ってしまったり、
たとえ話が脱線してもプロのナレーターなら、しっかりと時間管理をしているので大丈夫です。
展示会で配布する商品カタログは、一般的に使用しているスタンダードな商品カタログのケースが
多くありますが、これらを大量に持ち帰ることは、今の来場者にとってはただ重いだけで、
有効なアプローチ資料として残りません。やはり、ターゲットユーザーと直に接することが
出来るこの機会には、さらに掘り下げてセグメントされカタログ資料を用意する必要があります。
しかし実際には、なかなかそこまで時間的余裕が無いのではないでしょうか。
そこで効果を発揮するのが、ここでしか入手できない“号外!レア資料”を添付することです。
例えば、導入事例集。不特定多数に配る資料では、その掲載の了承がなかなか得れない導入された
お客様でも、会期中短期間での限定数ということになれば、事例の掲載の了承を得易くなります。
例えば、カタログでは明記できないアップデートな事柄。 競合商品との比較、商品効果が
最も上がる秘策、等々と、そして、ウィークポイントまでも言及するということも、今や必要なの
ではないでしょうか。
たとえカラーコピーをした資料であっても、来場者にとっては貴重な資料として、
出展社にとっては、来場者層へ照準を合わせたより効果的な資料として、そして、
ユーザーオリエンテッドな企業姿勢も訴求出来る資料となります。
かつて効果的なプレゼンテーション手法の一つとされていたのが、“より大きく”と競い合って
設置した大画面による全てを簡潔に網羅したプロモーション映像(PV)を、多数の来場者に
向けて放映披露することでした。
しかし、PVもインターネットで収集することが主流となった今、スマートフォンの普及に伴い、
カタログ同様にいつでも好きな時間に、どこに居ても見ることが出来る様になりました。
今やステージ形式によるスタンダードなPV放映は、待たされた挙句に、中身はプロモーション
映像と同等または多少編集が施された程度のPVが中心となったプレゼンテーションは、
「貴重な時間を無駄にされた・・・」「もっと違うことが知りたかった・・・」といった、
悪い印象だけを残し兼ねません。映像主体のプレゼンテーション手法を用いるのであれば、
展示会の来場者特性に合わせた特別なコンテンツ制作が必要不可欠です。そしてそれは、
インパクトを持った有効な訴求手段となります。
プロモーション映像を展示会ブースで放映する方法は、未だ商品知識が浅い来場者へ向けての
アテンション効果として、また、動的な装飾効果として、サブ的に絶えず流すことで活かされ
ます。
会場内のブース位置の優劣は残念ながらあります。
展示会の主催者としては、一社でも多くの出展社を希望するスペースで公平に割り振りたい
ところですが、均一な環境に無い展示会場内で、非難導線等の消防規定に従いながら、
ジグソーパズルの様に希望スペースでブースの配置を割り振っていった場合には、どうしても
不利と思われる位置へ、ブース配置をせざるを得なくなります。
これは物理的にどうしようもないことなのですが、ブースの位置は、ブースへの動員数を左右する
ことなので、ブース配置を主催者が決定する場合には、出展申込書と合わせて「希望ブース位置
(又は条件)の懇願」をすることをお勧めいたします。希望位置で決定されることはとても難しい
ことなのですが、同じ条件のブースが重なってしまった場合、「ブース位置に拘っている出展社」
という形跡を残すことで、多少なりとも希望に近づかせる可能性を残すものです。
会場内のブース位置が決定した後は、出展プロモーションの基盤となる、最も重要なブース内部の
レイアウト計画を最初にしっかりと立てます。
これを決定しない途中段階で、ブースデザインを先行してしまうと、折角の優れたディスプレイ
環境やブースデザインも、上部を支える柱や壁面などの構造上の問題で、一気に崩れて
しまうことが往々にしてあります。
ここは焦らず、土台をしっかり固めた上で上部の計画へと進めたいところです。
ブース内レイアウトを行う際の注意する点は、何処からでも自由にブース内へ来場することが
出来て、自由にブース内部の移動が行え、更に、ここがポイントなのですが、ブース内の何処に
居ても直ぐにブースの外へ退場することが出来るという、オープンレイアウトの回遊導線を
図った、来場者の意向を優先できるブースレイアウトを図ることです。
かつては、出展社の一方的な目論みに沿った導線を進まないと、ブースの外に出られない
という、正しく、強制導線を取るブースも多くありましたが、最早、真剣勝負の主戦場のひとつと
なった展示会では来場者も出展社も、目的違いのお見合いをしている時間はありません。
最適なブースレイアウトを効率良く計画する方法があります。
それは下記の順番に沿って、プライオリティを付けながら決めていく方法です。
1.必要な展示要素とそれに必要な面積を全て挙げ、全てにプライオリティを付ける。
<例>
Priority ①: 商品Aの展示<○○㎡>
Priority ②: 商品Bの展示<○○㎡>、
Priority ③: 実演に必要なストック<○○㎡>、
Priority ④: プレゼンテーションステージ+客席<○○㎡>
Priority ⑤: 商談セットx2組<○○㎡>
Priority ⑥: 常時4名立つことが出来る受付<○○㎡>
Priority ⑤: 商品Cの展示<○○㎡>…
2.全ての要素を同一縮尺面積で紙に書き取り、それを切り取ります。
そして、同じ縮尺のブース枠を書いた紙にそれを余裕を持って(余裕=通路となります)
適当に並べ、全てが入らない場合は、プライオリティの低い順から出品の再考を行い、
出展品を決定する。
3.会場全体図を基に、ブースに接する通路の通行量をシュミレーションし、
一番目立つと思われる展示場所から順番にプライオリティを付ける。
4.展示場所のプライオリティ順に、展示要素をそのプライオリティ順に並べて行きながら
全体のブースレイアウトを大間かに決定する。
この様な順番で、大間かな展示レイアウトを設定した後、実際の設計図に緻密に
反映していくと、最も効果的なブースレイアウトが、効率良く設定されます。
ブースレイアウトが決定した後は、いよいよ全ての要素を盛り込み、来場者を引き寄せる
ブースデザインに入ります。
料理人が心を込めた料理を、最も惹き立て、その魅力を十分にアピールするものが
盛り付けられる調和のとれた美しい「器」だとすると、ブース造形デザインもこれと同様です。
ブース造作のデザインもこれと同様です。
商品を惹きたて、ターゲットとなる来場者を呼び込み、そして居心地の良い環境をつくる。
正にこの「器」の役割を果たすものです。
ブースデザインの傾向としては、ビビットな色を抑えた、無機質な素材感で流れる様な
造作フォルムを、ブースファザードから内部構造全体にダイナミックにデザインし、
その中に、展示商品やサインを、照明効果により際立たせるというブースデザインなどが
ありますが、予算の大小に関わらず、商品を惹きたてる「器」となるブースデザインは、
最も重要な要素のひとつなので、工夫を凝らしながら、ターゲット来場者を引き寄せるブースに
しなければなりません。これを具現化させるのが、プロの造作デザイナーの役割となります。
造作デザイナーの本領を発揮してもらう為には、細かな指示は極力避け、決定している
ブースレイアウトと、商品のデザインコンセプトや、会社のビジュアルアイデンティティ
(VI と略して呼びます)から、デザインの方向性だけを示して、自由な発想で、人を惹きつけ、
居心地の良いデザイン案を引き出しましょう。
デザインコンセプトが無い場合は、望んでいるブースイメージを伝えることとなりますが、
難しい言葉で伝えるのではなく、誰でもビジュアルイメージが湧く、例えば、映画、商業施設、
レストラン、そこで流れる音楽…といった、同じコンセプトを連想させる、堅苦しくない
コンセプトワードで伝えるのも良い方法です。
景気の悪化に伴って、 ‘お祭り’的イメージの強かった展示会へのプロモーション予算は、
真っ先に削減され、出展辞退が相次ぎ、日本を代表していた展示会のいくつかが
消滅してしまいました。また、単独で開催されていた展示会が複合展のひとつに成るなど、
日本の展示会産業を取り巻く環境は、大変厳しいものがあります。
この様な状況以下、展示会会社からの出展会社へのセールスは年々激しさを増しています。
中には、「弊社は他社より半額で出来ます。お任せ下さい!」といった所謂、破格値だけを
売り文句としたセールスも聞かれますが、これは本当にバリューなのでしょうか…?
展示会プロモーション費用の中でも特に比重が高い、ブース造作費を例に挙げます。
頻繁に出展している出展社でも、この適正化価格とはなかなか解り難いものです。
一般的な商業展示会は、何も無いコンクリートむき出しの割り当てスペースに、
出展社自らで、展示プレゼンテーション環境を整える必要があります。
これに必要と成る構造物、環境整備関係のハード的要素の総称を、ブース造作費と呼びます。
この適正費用が解り難い理由は、基本的に、一社一社異なる、千差万別な出展社の
展示環境に合せて創造される、オンリーワンのカスタムオーダー建築物だからなのです。
このカスタムオーダー品に対して、なぜ破格値セールスが可能なのでしょうか?
それは好景気の時代、初任給と変わらない程の高価だったブランドスーツが、今では
半値以下で買えてしまうブランドが少なくありません。実はこれと同じ原理なのです。
ブース造作物費の流通価格は昔とは大きく異なります。
破格値セールスとは、発注先を探すのも困難だった程、需要が高かった時代の価格を基準として
「破格」としたセールスで、現在ではそれが流通価格だからこれを「定価」として捉える会社との
表現の違いだけなのです。どちらが誠意ある会社なのかは、お解りのことと思います。
供給が需要を超えている今、流通価格は当然、昔の「お祭り」価格とは大きく違うのです。
そして現在、展示会産業では生き残りを賭けた、様々な効率化、合理化の努力が日夜行われて
います。しかし、最終的には図面を基に、手作業により巧みに加工していく職人さんや、技術者の
技となるものです。
それら人件費の比重が大きくなってしまっている今、流通価格を定価としている展示会会社へ
突然 ‘破格値’を強いた場合、どうなるのでしょうか?
当然、最終的には人件費を削るしか無くなってしまいます。
その結果、「オープンしてしまったのに、プレゼンテーションするブースが完成しない…」
なんてことも在り得ることなのです。
よって、適正価格をベースにしながら、今までとは違う手法を駆使して‘結果’に結び付ける
ことに比重を置き、今ではプライオリティが低くなってしまった部分は削減するといった、
現状に則した予算配分が行われたブース造作が、最もバリューなブースとなるでしょう。
様々な国の展示会を実際に携りながら、学び、実感してきたことを基に説明させていただきます。
展示会の元々の歴史は、言語も文化も違った隣国同士が隣り合う欧州地域に於いて
様々な物産品をトレードする市場(いちば)のルールが 、システム化されていくことから
はじまり、大陸を越えた取引の場として更に進化しながら、世界全体へと拡がっていったのでは
ないでしょうか。
特にアジアの小さな国と都市であった、シンガポール、香港、上海に於いては、国からの強力な
支援のもと大いに活用された結果、外貨獲得の窓口として、また、世界中から多くの人々を集める
招く手段ともなり、国際都市へと大きな飛躍を遂げた、契機の一つになりました。
世界の全てのものがインターネット見直されてきたのではないでしょうか。
海外マーケット進出の試金石として、また、世界への情報発信拠点として展示会を活用することは、
費用対効果の高い有効な手段となります。海外の実力ある会社は、遥か昔から既に必要に
迫られながら海外市場へと活路を求め、その足掛かりとして、注目を集めている世界の
展示会へ果敢に出展していきながら、世界市場を相手に自社商品の可能性を見出してきました。
海外の展示会へ出展するためには、高い語学力や、特別な知識が必要となるイメージがあるかも
しれませんが、実はそんなことは無いのです。基礎英語力が有れば十分対応できます。
それは、世界中で開催されている著名な展示会の殆どが、全くその国の言葉、文化、習慣が
解らない遠い国の会社でも出展出来る様、解り易いシステマチックな出展準備や開催計画、
そして海外出展社をバックアップする様々な体制に基づいて運営されているからです。
これらは“海外出展社マニュアル(又は海外出展社キット)” に全て簡潔にまとめられ、
出展申込後に主催者から送られてきます。
この‘虎ノ巻’一式があれば、展示商品の輸送、通関、会場での受け渡し、通訳の派遣、
出展ブースのセッティング、ケータリングによる昼食の手配から、近郊ホテルへ行く
専用シャトルバスの時刻表…等々、現地で必要とされる事柄の殆どが、事前に対処出来る
様になっています。
最初は手探りの中、不安が付き纏うかもしれませんが、インディペンデント精神を発揮して臨めば
2回目以降はどの国の展示会であれ、難なく行えるはずです。
さあ、先ずは業界関係者が誰でも知っている、または、良く視察ツアーが催されているなど
世界が注目する海外展示会の出展資料を取寄せましょう!(参考:JETRO)
観光都市からかなり離れ、日本人も殆ど見かけない小さな街の展示会場で、日本の会社が
単独で参加して、片言の英語と身振りを駆使してプレゼンテーションしながら、多くの来場者
を集めている盛況な日本ブースがいくつもあります。
習慣や文化が違えど、求められている技術や商品は同じです。
最早ネットが、通信、情報のメインインフラとなった今、世界がマーケットになるチャンスです。
会社の明日を開くため、日本産業の復活に向けて海外の展示会を大いに活用しましょう!